厚木市が変化/健康こどもの森へ提案
2013年7月5日
★20世紀型公共事業からバージョンアップを★
厚木市も柔軟に検討を重ねたようですが、「9月から着工」と「予算を掛けたくない」があってか、肝心の希少動植物の保全策立案に工夫の余地ありではとも思えました。また、動植物の調査を一人で広くこなせる人は希です。病院にも内科や外科などがあるのと同様、鳥類なら特定の鳥に詳しいのが実情。どの市職員が調査員の力量を見定めるのでしょうか?
この設計のままでは、生物多様性は破壊されると断定しても差し支えないでしょう。声を出さない動植物の視点に立った場合、突如として家である草木水辺が荒らされる上に、年間10万人に生活の場へ踏み込まれることになります。環境配慮5原則の第4案である「一時捕獲する絶滅危惧種の動物」は公園開園後どうするのでしょうか? イノシシはどこに行くでしょうか?
湿性植物園を作ろうとするエリアは、公園計画地の中で最も肝心な生物多様性ホットスポット。そこに池を作れば、どうなるでしょう? ここには存在しない植物が植えられたり、今はいないアメリカザリガニが増えて、下流域となる湿地・休耕田エリア全体に悪影響をもたらすことは容易に想像できます。
①8月末までに専門家による提言書の作成・公表
②湿性植物園の整備見直し
③二カ所ある滑り台の内、一カ所は取りやめ
④空中回廊を車椅子対応に
⑤空中回廊に併設したキャノピーウォークを設置
★湿地・休耕田エリアの保全、滑り台の見直しを★
私は①~⑤を口頭で伝えました。協議終了間際、クロージングとして、①を確認したところ、「検討する」と前向きな返答でした。8月末まで時間は限られますが、提言書を作っておいた方が、行政にとっても後が楽です。上下の概要図を見比べると違いがあります。上の図は厚木市HPより抜粋しました。この日配布された図(下の拡大画像)をよく見ると、階段のような人工構造物が新たに加えられています。「長さ日本一」をうたい文句にせざるを得ない滑り台。見直しがお勧めです。
何事も道を究めれば、力量がつきます。希少種のリストと概要図を見ただけで、どのようなエリアかを言い当てる達人すらいます。そのような域に達した専門家に依頼し、工事に際した注意点を提言していただければ理想的です。
長崎大学環境科学部 吉田謙太郎教授は、著書「生物多様性と生態系サービスの経済学」において、「生物多様性に関する人々の価値観は常に揺れ動き、何を優先すべきか、何を最低限守るべきかということに関して社会的合意が得られている段階にはない」としています。厚木市の中で、生物多様性あつぎ戦略が公表(今年3月)されている一方で、生物多様性の視点が希薄な公園計画が着工直前であることを言い当てています。生物多様性あつぎ戦略に魂を入れるいい機会となるでしょう。
★今後の解決策は、モデルは環境情報協議会★
今回は、私がいわば盾になって生物多様性を守る役割を担っているとも言えそうですが、解決策があります。厚木市にも「環境情報協議会」を参考に環境総務課が他部署の施策に関与できる場を設置することです。生物多様性に理解がある住民や工事関係者もメンバーになって、工事を行う上で具体策を話し合う環境情報協議会を設定している自治体があります。但し、これは農地改良に限られるようなので、協議できる案件を広くすることが望ましいです。なお、以下は本日、厚木市へ提出した私案です。
湿地 休耕田エリア |
湿性植物園に外来種が集まり、下流域に影響。レッドデータ種生息状況の予測評価が行われるまで、工事は見合わせる。 |
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委員会設置 | 環境調査報告がないため、市民、学識経験者や県職員らに最低限の課題抽出を依頼。実施設計や工事の在り方に提言書を8月末までに提出願う。9月以降も工事実施に際し、保全方法について意見を述べる場とする。「生田緑地ホトケドジョウ保存事業実行委員会」(川崎市)が参考事例。負の生態系サービスの視点でも考察。 |
調査・保全 | 最低一年。四季を通した動植物の生息を把握。 |
常設型環境情報 協議会設置 |
他自治体の事例を参考に、環境情報協議会を設置。要項に「絶滅危惧種の生息環境や景観等との調和に配慮」と明記する例も。 |
開園後の体制 | 施設・ガイド・プログラムの中で、ガイドの質が最も重要。指定管理者の選定は透明性を保つ。運営委員会を設置する。 |
懸念事項 | 一つの課が全てを決定できる。市民へ説明不足。森林管理の意志決定がない。 |
根拠:生物多様性あつぎ戦略(平成25年3月発表)における行動戦略⑥(P.39)の 「希少野生動植物のモニタリング調査を実施し、絶滅の恐れのある種については、適切な保全活動を実施」
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